コロナ禍によりホテルや旅館の経営環境は厳しくなりました。国内観光、出張、そしてインバウンドもこれから回復するには数年が必要かもしれません。
ひらめきのアイデアに頼らず論理的に組み立てれば付加価値が見えてくる
では、それまでどうするのか?思いつきのアイデアに頼るのではなく、根本的な集客と営業のあり方を考えてみましょう。
すぐできることの1つとして、営業モデルを見直すことが挙げられます。営業モデルの見直しとは、一言で言うと「切り口」を変えるということ。切り口を変えるというのは、「もう1つの思考の流れ」を組み立て、従来の営業モデルとのシナジー効果につながる商品サービスを生み出すことだと言えます。
その思考モデルの基本を、1.会議 2.セミナー・研修 3.テレワーク 4.ワーケーション 5.自己開発 から組み立ててみます。
〇ホテルの利用者は「観光」「出張」そしてもう1つは?
ホテルや旅館の利用者は、観光客や出張客です。そして、コンベンションホールを備えた施設なら地元の研修会や結婚式や宴会場としての利用です。
この基本的機能に沿って、商品やサービスが企画されてきました。もちろん、ここは重要です。
その基本サービスをさらに展開させることで、収益力のある商品企画をする思考モデルをまず体感してみましょう。
収益力を上げる、すなわち「人数」×「単価」=売上になり、利用人数を増やすか単価を上げることで確実に収益力もあがります。基本は、商品です。
これまでは「場所の提供」が商品の基本コンセプトでした。そこに、どういう付加価値を付けていくのかが、これから考えていく1つの目標です。
観光客や出張客の集客は、競争の拡大に勝つ必要もあります。
そこにある、付加価値を見出し、投資をしないで簡単に商品へと展開することが、設備投資の前にできる基本施策といえます。
〇これからのビジネススタイルとライフスタイルとは?
コロナ禍でテレワークが進みました。賛否はいろいろありますが、働き方のなかでテレワークの方向性は必ず拡大していくでしょう。
一方、ビジネスも生活も高度な専門性を持つ人たちが新たな可能性を模索する社会構造がどんどん拡大しています。一流企業の人材を見ればわかりますし、専門性の高い人たちはフリーランスとしての活躍を求め、コンサルタント業も拡大しています。ここにも、働き方や意識の変化が生まれ、その流れが加速しています。
つまり、前述した自己の能力をどんどんと高める思考を繰り返して、その思考を社会に還元しているのが現代の社会です。この流れも、どんどん加速するでしょう。
〇これから必要となるワンルームの可能性
テレワークが拡大することにより、これまでのオフィスという集団と時間で構成される特定の空間から、それぞれが自由に思考を展開させて新たな価値を生み出し生産性を高めるための、場所が必要になることはすぐに想像できます。そのときに必要な空間が、ワンルームなのです。
テレワークは、距離の概念を変えていくでしょう。つまり、東京と1000キロ離れた場所にいても仕事はできるようになりました。1000キロといっても、飛行機なら公共交通機関の移動も含めて半日ほどの移動で完了します。前日の仕事を終え、思考をまとめながら特定の場所に移動して準備をすれば、翌朝の会議に参加できます。
〇場所を提供するだけのサービスには限界がある
しかし、ロケーションや立地、さらに施設の新しさや価格競争力といった競合他社との立地間競争や施設設備競争において勝てなければ意味がありません。
最初に、1.会議 2.セミナー・研修 3.テレワーク 4.ワーケーション 5.自己開発 を挙げたのは、これらのキーワードを営業方法を考えるときのヒント、切り口とするためです。ビジネス、フリーランス、そして個人、この3つのカテゴリーを括り新たな利用者を掘り起こすためにサービスの大枠を決めて、複数の要素のバランスを考えたうえでその中心に位置づけできる「具体的な商品(サービス)」を浮かび上がらせることが重要です。
この商品に付加価値を付けることで、他社との大きな差別化が実現します。
〇思考の展開と思考を具現化するための作業を支援するサービスを付加価値にする
最初にワンルームという場所が思考作業のために提供されるという話をしました。ビジネスであれば、ホテルや旅館の一室で仕事をします。企業であれば、会議や研修も行うことができます。フリーランスならワーケーションの場所として、個人であれば土地への好奇心をベースに観光や趣味あるいは最近は動画撮影のロケ地としての利用も拡大しています。。これら、宿泊場所の提供という概念を超えた利用という潜在ニーズがどんどん拡大していることもあるはずです。
それらの多様なニーズを下支えするビジネスモデルの展開は、ホテルや旅館の個性になるとともにサービス向上につながります。
これが、付加価値です。
〇具体的にできるワンルームという空間に付加価値を加えるビジネスサービス
一例を紹介します。ワンルームでできるビジネスはずばり「頭を使うビジネスモデル」です。情報戦略だけで収益の拡大を実現する簡単な方法です。
たとえば、投資コンサルタント業務があります。ホテルや旅館に株式投資のプロがいれば、すぐにできます。
しかし、一般のホテルマンのなかにそう簡単に取り組めるビジネスモデルではありません。
では、ビジネス編集を支援するビジネスモデルはどうでしょう。最初に挙げた1.会議 2.セミナー・研修 3.テレワーク 4.ワーケーション 5.自己開発 に関連する業務です。いわゆる、ビジネス支援サービスです。
ホテルや旅館経営(空間の提供)+一歩踏み込んで情報コーディネート業務を組み込む=独自の強さを生かした新たなビジネスモデル
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